ブロ研 [ブロンコス研究所]

NFL DENVER BRONCOS について独自研究を行うブログ

選手の癖を調べる仕事

MMQBに面白い記事があったので、紹介してみたいと思います。

 

ブロンコスが雇っている2人のコーチ。彼らがやっている秘密の仕事について書かれています。数日前の記事を急いで翻訳したので文章とか雑です。

 

 

mmqb.si.com

 

 

 

攻撃ラインマンの足の角度が10度違っていたとして、それを見て次にどんなプレイが来るか判断できるだろうか。ブロンコスはそうした些細なことから、多くを知ることができると信じている、数少ないチームのひとつだ。

 

ブロンコスは2人の無名なアシスタント・コーチを雇っている。彼らの仕事は公開されていない秘密だ。その仕事を要約すれば「見つけて教える」である。攻撃タックルの足の位置からランプレイかパスプレイかを読めるのか? クォーターバックのハンドシグナルからプレイのヒントが得られるか? もしそうであるなら、HCゲイリー・クービアックはそれを選手たちに教えたいと望んでいる。

 

そうした考えは、LBデマーカス・ウェアにとっても歓迎すべきものだった。彼はずっと独自にそれを実践し広めてきた。NFLのチームはもっと相手選手の癖を研究し、それを指導するべきだ。カウボーイズにいた9年間、ウェアはそう主張してきた。彼はそうしたことをもっと学びたかった。コーチたちにも学んでほしかった。一般的な対戦チームの傾向だけでなく、選手個人の傾向を研究し、指導してほしいと願っていた。しかし、彼の要望はいつも突き返されてきた。

 

「センターが指を差し、クォータバックが何かを言う。彼らは教えてくれている。なのに、なぜそれを利用しないんだ?」ウェアは信じられないといった口調で語る。「すべてのチームがやるべきだ。カウボーイズのコーチは反対するかもしれないけど、僕は9年間それをやってきて、今もやり続けている。コーチとは口論になったことすらある。その結果、ずっとひとりで実戦し続けてきたんだ」

 

そして2014年、ウェアはブロンコスと契約し、その翌年にはゲイリー・クービアックがチームの新ヘッドコーチに就任した。その年、クービアックは2人のインターン・コーチを雇った。元ハワイ大学のアシスタントだったフィリップ・ラウシャーと、元ビルズのクオリティー・コントロール・コーチだったタデウス・ボガーダスだ。

彼らの仕事? それは「傾向」だ。しかし、どこでもやっている一般的な「攻撃の傾向」や「守備の傾向」ではない。彼らは対戦する相手選手たちの癖を調査する特別任務に就いている。そして、彼らには攻撃選手と守備選手に、癖について説明するユニークな特権も与えられている。

 

彼らの肩書はあいまいだ。コーチング・アシスタントという名称だが、多くのチームではクオリティー・コントロールと呼ばれている。厳密にいうと、彼らはチーム組織の最下層にいる。しかし、彼らはその仕事において、もっとも頼りになる男たちかもしれない。

ボガーダスは2012年にボール州立大学でMBA経営学修士)を取得した。彼の名前を出すと、守備選手たちは笑顔になる。「彼はなんでもやるんだ」とLBシャック・バレットは言う。「彼は僕たちの準備を手伝ってくれる。僕たちが知っておくべきことはすべて、彼が知っている」

ラウシャーはUCLAで元タイトエンドだった。攻撃選手たちは彼にニックネームを付けている。それは「KGB」(旧ソ連の秘密情報機関)だ。

 

ボガーダスとラウシャーの2人は、何時間もフィルムを見る。無音のコーチ用フィルムだけでなく、テレビの試合放送も確認し、マイクが拾っているオーディブルや守備選手の会話音声を集めては、そこからパターンを識別する。

彼らはハンドシグナルでも同じことをする。クォーターバックとワイドレシーバーの間や、コーナーバックとセーフティーの間でやり取りされるハンドシグナルだ。彼らはポジションコーチのために説明会を準備し、攻撃と守備のミーティングで対戦する選手たちの小さな悪い癖について指摘する。

 

ボガーダスとラウシャーは、これらの傾向はあくまでもヒントであり、次のプレイが何か、答えを教えてくれるわけではないと強調する。

 

いくつか例を挙げてみよう。

 

「守備ラインがスタンスにおいて傾いていると内側に行く。あるいは、ツイストする時には決まったやり方で伝達している」(RTドナルド・スティーブンソン)

 

「スタンス、暗号の言葉、クォーターバックがどのように手を握るか、あるいは膝を曲げるか、センターのかかと」(LBシェーン・レイ)

 

「コーナーバックがどう立っているか。足がべったり付いているか、かかとが浮いているか。手の位置」(WRジョーダン・ノーウッド)

 

「もし相手の右手が下がっていたら、そいつは右に行く。左手が下がっていたら左に行く」(TEバージル・グリーン)

 

そして、そこには裏の裏もある。コーチたちは、どの選手が自分の癖を知っていて、それをわざとやっているのかをも調査する。ここぞという時に癖を利用して、相手の裏をかこうとするからだ。

「このリーグには頭の良い奴らがたくさんいる」OLタイ・サムブライロは言う。「だから傾向があるのは必ずしも最悪というわけじゃない。相手がそれを知っているのを利用して裏をかくこともできるからだ」

 

これほど研究に専念しているのはデンバー独特のものだと、他チームにいたことのある選手たちは言う。OTスティーブンソンは最初の4年間をチーフスで過ごした。そこでは末端のコーチたちがこうした情報を話しあい、ポジションコーチが選手たちに伝えていた。しかし、攻撃の全体ミーティングで選手個人の傾向について話し合うことはなかった。

 

「ランニングバックのコーチが、守備ラインについて何か気がついたとする。コーチはその情報を攻撃ラインのコーチに伝える」スティーブンソンは言う。「ここでは実際にミーティングをしている。そのための専門家もいる。我々は他チームより熱心かもしれないね」

 

スティーブンソンの元チームメイト、チーフスのWRジェレミー・マクリンは、主にベテラン選手たちが個人の傾向を研究していると語った。しかし、所属していたチーフスとイーグルスどちらでも、コーチから指導を受けたり、チームのスケジュールに組み込まれてはいなかった。

 

「こうした研究は次のレベルの話だ」マクリンは言う。「俺はやってる。特に優れたコーナーバックと対戦する時にはね。だけど普通レベルの選手は研究なんてやってない」

 

ブロンコスのワイドレシーバー室では、ラウシャーがポジションコーチたちと協力して、次に対戦するコーナーバックたちの傾向を分析したフィルムを制作する。そして、それを選手たちは家にいながらタブレットで確認することができる。

WRノーウッドは、ブラウンズ、イーグルスバッカニアーズを渡り歩いたベテランだが、ここまで個人の傾向を研究しているチームはなかったと語る。「ここでは他チームよりも詳細にやっている」ノーウッドは言う。「僕はここに来るまで、相手選手の個人フィルム分析を受けたことはなかったよ」

 

(中略)

 

次の疑問は実例だ。はたして、こうした調査分析が、実際にプレイオフの試合で役に立った例があるのだろうか。

 

「詳細については言えないが」OTサムブライロは言う。「例を挙げると、我々はセーフティーのローテーションを見る。一般的に守備はセーフティーをプレッシャーに対して配置する。セカンダリーの動きを見てから、目の前の守備ラインを見る。この情報を合わせて、何が起きているのかを理解する。ラウシャーはどのチームが情報を与えてくれるか、与えてくれないかを教えてくれる」

 

多くの場合、こうした分析はさらにミクロだ。コーチたちは、攻撃と守備でもっとも癖のある相手選手をひとりずつ選び、全体ミーティングでみんなに説明する。

 

「攻撃ラインの5人全員を研究して、傾向を探すのは大変だ。なので、ガード、センター、タックルどこであれ、我々はカギとなる選手をひとり選ぶ」LBバレットは言う。「5人についてのリストを読んで、”この選手の傾向は使えないな”と思ったら、リストから消す。でも、たいてい誰か1人は使える選手が残る」

 

OTスティーブンソンは言う。「もし傾向があからさまだったら、我々はその選手に標準を合わせる。オマエの癖はバレバレだから直せと、おそらく相手チームの誰も注意していないのだろう」

 

2人のコーチたちは、練習のスカウトチームで、相手チームの役をする選手にその傾向をやらせる。たとえば、練習生のOTジャスティン・マーリーは、パスプレイの時だけ外側の足を数インチ下げる、といった具合だ。

そうすれば、守備選手たちは、その傾向をよく知ることができる。そして、その癖を見つけて、それを仲間に伝達するのにも慣れることができる。

LBデマーカス・ウェアが試合で後ろを振り返り、両方の拳を合わせてランプレイだと知らせ、手を上にあげてパスプレイだと知らせているのも、そういうことだ。こうしたシーンは分析が進む試合後半になるとより見られるだろう。

 

「注意深く、そして我慢強くなければならない」 LBウェアは言う。「こうした研究はリーグで注目されはじめているように感じている」

 

ロッカールームで、CBアキブ・タリブだけは、ブロンコスがやっている詳細な分析に驚いていなかった。彼は前に所属していたチームでも同じことをしていたからだ。そのチームとはHCビル・ベリチックペイトリオッツである。

 

LBデマーカス・ウェアがいた時には、カウボーイズはこうした研究をしていなかったそうだよ、とCBタリブに伝える。

「だから彼らの守備はダメなんだ」CBタリブは締める。「こうした小さな特別なこと、彼らにはそれが足りないんだよ」