ブロ研 [ブロンコス研究所]

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ウエイド・フィリップスの魔法

2週間ほど前に読んだESPNの記事が面白かったので、また適当に翻訳してみました。

ジョン・クレイトンが、ブロンコスの守備コーディネーターであるウェイド・フィッリプスの守備、その成功について書いています。

 

元記事

The magic of Wade Phillips continues with the Denver Broncos - NFL

 

 

 

ウエイド・フィリップスは、まだそのマジック・タッチを失ってはいなかった。

HCゲイリー・クービアックとは、テキサンズでリーグ史に残る守備再建を達成したとき以来の再会になるが、68歳のフィリップスは、元から強かったブロンコス守備を、破壊的なレベルにまで向上させている。開幕5試合で14テイクアウェイ、22サック、これはリーグで17年ぶりの記録だ。ブロンコスは攻撃が苦戦しているにもかかわらず、トータル守備でリーグ1位に立っている。

しかし、これらは別に驚くべきことではない。

フィリップスは過去に19回、トップ10の守備を構築している。これまでに5人の殿堂入り選手を含む、27人のプロボウラーたちをコーチしてきた。1989年にブロンコスの守備コーディネーターに就任して以来、フィリップスのチームはすべて就任1年目にプレイオフ進出を果たしている。今年ブロンコスプレイオフに進出すれば、連続記録は7チーム目となる。

真に驚くべきは、フィリップスが1年間無職だったことだ。彼は売れ残りの当たりくじだった。彼が休んでいる間に7人のヘッドコーチが職を失った。そして今や、彼はNFLでもっとも熱い守備を動かしている。

では、フィリップスのマジックには、どんな秘密があるのだろうか。

「もっとも大事なのは、優れた選手を集め、彼らの長所を活かすことだ」と、フィリプスは控えめに答える。たしかに彼は多くの優れた選手をコーチしてきた。しかし一方で、そうした優れた選手たちの多くが、彼の守備でもっとも活躍し、才能を開花させたことも事実だ。

フィリップスはシンプルさを好む。彼はよく「3-4守備も4-3守備もそれほど違いはない。違うとすれば4-3ではDEが地面に手を付き、3-4では立ったままということだ」と言う。彼は守備ラインに1ギャップでQBにアタックさせることが、プレイメイカーとしてやる気を出させると感じている。そして、彼には守備システムに合う選手を見つける才能もある。

 

それでは、フィリップス守備における成功の鍵をいくつか紹介しよう。

 

 

1. 優れたパスラッシャーを見つけて活躍させる

「たいていの場合、私が呼ばれるチームは攻撃が良く、守備の悪いチームだ。だから前任者を解雇して私を雇う」と、フィリップスは言う。それはすなわち、外から戦力を補強し、人材を集めることを意味する。

2011年のテキサンズは典型的な例だった。フィリップスはドラフトで、守備ラインにJ.J.ワット、パスラッシャーにOLBブルックス・リードを欲しかった。

「チームにはすでにマリオ・ウィリアムズがいたので、彼をOLBに移動した。J.J.ワットを指名したかったからだ。それは上手くいった。もっとも大事なのは、優れた選手を得ることだ」

テキサンズにはパスラッシャーのOLBコナー・バーウィンもいて、チーム・トップの11.5サックを記録した。チームのサック数は前年の30個から44個に増え、平均パス喪失ヤードは61.7ヤード改善した。2011年の守備は全体2位、パス3位で、チーム成績は12勝4敗となった。 

2004年、フィリップスは、OLBスティーブ・フォーリーをパスラッシャーに、ドニー・エドワーズをILBに起用して、チャージャースの守備を改善させた。チーム成績は4勝12敗から12勝4敗になった。フォーリーは10サックを記録。翌年にはOLBショーン・メリマンとDTルイス・カスティーヨをドラフトして、守備はさらに良くなった。

「我々はアウトサイドのパスラッシャーを獲得しようと試みてきた。ビルズ(1995年)では、ブライス・ポウプを連れて来た。彼はOLBに入って17.5サックを記録、守備MVPになった。当時のチーム にはブルース・スミスがいた。コーネリアス・ベネットもいたので、彼をILBに移動した。彼は活躍してくれたよ」

ブロンコスでは、パスラッシャーを探す必要はなかった。デマーカス・ウェアとボン・ミラーがいて、ドラフト1巡でシェーン・レイを指名、さらにシャクエル・バレットも控えている。ILBのダニー・トレバサンもスピードとパスラッシュの能力を備えている。パスラッシャーを活躍させる名人にとっては、夢のような環境だ。

  

 

2. 優れたカバーコーナーがいること

ブロンコスにはすでにCBアキブ・タリブとCBクリス・ハリスという、2人のプロボウル級マンツーマン・カバーコーナーがいて、フィリップスはその財産を受け継いだ。

テキサンズでは、GMのリック・スミスがCBジョナサン・ジョセフを見つけて来た。「チャージャースでは、CBクィンティン・ジャマーがいて活躍してくれた。ビルズでもトーマス・スミス、ジェフ・バリスがいた。ファルコンズでも良いCBがいたよ」

カウボーイズでは、29歳で全盛期のCBテレンス・ニューマンがいた。優れたカバーコーナーがいるおかげで、フィリップスはブリッツを仕掛けることができる。

アキブ・タリヴとクリス・ハリスがいるブロンコスでは、さらに自由にブリッツすることができる。多くの選手がサックを記録しているのはそのためだ。相手QBはブリッツに対して、27/47回しかパスを成功させていない。QBレイティングは52.5だ。

 

 

3. Sにプレイメイカーがいればなお良し

テキサンズで成功した鍵のひとつは、FAでベアースのFSダニエル・マニングと契約したことだった。

ブロンコスでは、SSにT.J.ウォードがいてなんでもできる。新加入のFSダリアン・スチュワートも良いプレイをしている。うちにはカバーできるCBもいる。ラッシュできるSも役に立つ」

ウォードは過去3年で5.5サックを記録している。この期間ではSでトップの数字だ。

 

 

4. 守備をノーズタックルに合わせる

これはフィリップス守備における秘伝のソースかもしれない。彼はこれまでサイズの小さいNT(グレッグ・クレイゲン、ジェイ・ラトリフなど)でも、巨体のNT(テッド・ワシントンなど)でも守備を構築してきた。

フィリップスは1ギャップ・システムを採用しているため、NTがペネトレイトし、スクリメージをアタックすることを好む。一般的にNTは2ギャップを担当し、ダブルチームを受ける。一方でフィリップスは軽量のNTを使ってスタント(交差)させる。

「小さい選手にNTはできないと言われている。テッド・ワシントン(6-5 370)はほぼスタントせず、2ギャップを担当していた。彼は片方のサイドをプレイし、その巨体でもう片方のサイドも埋めながら、ペネトレイトもできた。しかし、小さい選手はスタントすることができる。大事なのは、何ができるかだ」

 

* 1ギャップは守備選手が各自で1つのギャップを担当し、そこをアタックする。2ギャップは守備ラインがひとりで2つのギャップを担当し、相手の動きを見てから反応する(はず)。

 

 

5. 守備を楽しく

OLBデマーカス・ウェアは、ダラス時代にフィリップスの守備で最高の活躍をした。そのためブロンコスの新しい3-4守備で、DEからOLBに移動するのは大歓迎だった。ウェアは最初のミーティングのことを覚えている。

「ビル・コーラー(DENのDLコーチ)がミーティング・ルームに現れて、“オマエたちはもう2ギャップをやらないぞ”と言ったんだ。僕たちはこれまでジャック・デルリオの守備で、2ギャップに慣れていた。コーラーは“QBを追いかけずに、待ち構えているのはもう終わりだ。オマエたちはロスタックルを決め、ファンブルを奪うんだ”と言った。守備ラインはみんな、それを気に入ったよ」

 

さて、今年のブロンコス守備は、フィリップスの長いコーチ歴で何番目にランクされるのだろうか。

「とても難しい質問だ。私はこれまでたくさんの優れた守備を見てきたからね。イーグルスではレジー・ホワイト、ジェローム・ブラウン、クライド・シモンズがいた。おそらく今のブロンコス守備は、これまで経験したなかでもっとも“速い”と言える。この守備には激しいラッシュとセカンダリーのスピードがある」

フィリップスの守備において、スピードはマジックとなる。しかし、フィリップス自身もまたマジックであり、我々はデンバーで再度それを目撃しているのだ。

 

 

 

 

ウエイド・フィリップスの守備に関しては、本人が解説している動画もありますね。内容は興味深いんですけど、英語なのと、話が長いのがちょっとw

 

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